擁壁(ようへき)は、急傾斜地危険区域にある大規模なものから、1mちょっとの簡単なものまであります。
擁壁がある土地は、安全面でも経済面でも、擁壁のない土地よりもリスクが大なり小なりあるものです。
僕たち夫婦は、擁壁のある土地を購入して家を建ててます。
擁壁は隣家のもので、高さ2m以下になりますが、これがいろいろと困ったことがありました。
現在、その困ったことは無事解消されていますが、擁壁のない土地ならまったく悩むことも考えることもなかったことです。
この記事では、2m以下の擁壁があることで、
- リスクになること
- 困ったこと
についてお話ししていきます。
隣家に2m以下の擁壁が隣接する土地に、どのように家を建てたかは、下記記事で読めます。
Contents
2m(メートル)以下の擁壁とは?
土の横圧や雨水などの静水圧、そして家自体の重圧がかかるので、擁壁はしっかりと強度のあるものでなければいけません。
擁壁は土留の1種ですが、簡易的なものが土留、強固に作られたものが擁壁と区別されています。
擁壁の種類には、10メートルを超えるものもあれば、1メートルちょっとの高さのものまであり、施工する方法もいくつかあります。
2m以上の擁壁を作る際、行政に申請書を提出しないといけませんが、2m以下の擁壁については申請書を提出する必要がありません。
2メートル以下の擁壁のリスクとは?
ですから、擁壁がある土地自体が、擁壁のない土地よりもリスクが高いことを認識する必要があります。
擁壁のある土地を購入するときに、知っておかなければいけないことがあります。
擁壁は、建築基準法に基づいて設計されている工作物です。
前段でもお話ししましたが、擁壁を作る前に、工作物建築確認申請手続きが必要になります。
しっかりとした構造計算がされていて、また設計もされているものだけが許可されます。
逆に、構造計算や設計がしっかりと行われていなければ、申請がとおることはありません。
擁壁の工作物建築確認申請は、2m以上の擁壁を作る場合には必要ですが、2m以下の擁壁を作る場合は申請の必要がありません。
申請の必要な高さは「2.1m」で、「2.0m」だと必要ありません。
このたった「10cm」で、申請の有無が別れてきます。
2m以下の擁壁をリスクに感じるのは、まさにそこです。
というのも、最近の新しい擁壁なら、まだ安心を感じるところもあります。
もちろん構造計算や設計がしっかりとしていればの話です。
ですが、見るからに古い2m以下の擁壁だった場合はどうでしょう。
いつ作られたか、どのように作られたか、そこが不透明すぎます。
2メートル以上の擁壁なら、工作物建築確認申請を出しているので、行政に聞けば構造などがわかります。
ですが、2メートル以下の場合、申請をしていないので、行政に確認してもわかりません。
唯一確認できる方法は、擁壁の維持管理者である持ち主が、施工時の契約書や構造設計書を持っていればになります。
しかし、もし保管していたとしても、それが強度的に問題のないものか分かりません。
もし適当な作りをする業者だった場合、設計書と違う作りをしている可能性もあります。
鉄筋の本数を減らしていたとしても、コンクリートの中では確認のしようもありません。
ですから、購入前に安全かどうかを確認する必要があります。
そして1番の問題は、劣化が認められる擁壁だったとしても、土地の持ち主が新規や修復で擁壁を作り直してくれるかが問題になってきます。
お金がなければ作り直すこともできません。
隣家にお金があるかないかは、土地を購入しようとしている時点ではわかりませんよね。
また、自分たちの土地に擁壁がある時も、同じことが言えます。
擁壁のない土地なら、考えることも工事費も必要ありません。
先ほども話しましたが、自分の土地だろうと隣家の土地だろうと、擁壁がある土地には大なり小なりリスクがあることを知っておく必要があります。
擁壁のリスクを回避するためにチェックをしたいこと。
何も知らずに擁壁のある土地を購入して、あとになって、
「そんなの聞いてないし、知らなかったよ」
とならないように、購入前に必ずチェックしたほうがいいです。
これからお話しするチェック項目は、実際に僕たちが業者と一緒にチェックした際に聞いたことになります。
2m以下とお話ししていますが、内容的には2m以上でも使えるものになります。
擁壁の見た目(表面の状態)をチェックする。
その圧力のせいで、擁壁が変形していないかを確認してください。
・亀裂
・ひび
・前後にずれがある
・上下にずれがある
・傾いている
・亀裂が入り折れている
・ふくらみがある
もし、上記のような状態が発見できた場合は、擁壁の作りが悪いか、もしくは地盤に原因がある可能性があります。
土地を購入する前に必ずハウスメーカーや専門業者に相談してください。
擁壁に使われている材質をチェックする。
現行法で、安全の高い擁壁は以下の2種類とされています。
・鉄筋コンクリート造擁壁(RC造擁壁)
・間知石練積造擁壁
逆に、現行法で認められていない擁壁は以下のとおりになります。
・ガンタ石積擁壁
→古いコンクリートの塊などを積んだもののため
・大谷石積擁壁
→大谷石が風化等により著しく劣化しているものが多いため
・玉石積擁壁
→玉状の石を積んだもの
・二段擁壁(増積(ましづみ)擁壁)
→当初築造した擁壁の上に増積みしたもののため
上記認められていない擁壁で、特に危険なのが、大谷石積擁壁と二段擁壁と言われています。
と言うのも、2種類とも崩れた事例が特に多いそうです。
業者だけでなく、自分たちで調べた複数の自治体(横浜市建築局等)のホームページにも必ず掲載されていました。
大谷石積擁壁は、少し古い昔ながらの住宅の塀などに使われていることが多く、見たことのある方も多いと思います。
また、二段擁壁は特に危険の高い擁壁と言われています。
元々あった擁壁の上に、ブロックで作られているものが多いです。
擁壁の上に擁壁を作っているので、元々あった擁壁に、構造計算時に想定していない力が加わり、より崩落の危険が高いのが理由だそうです。
水抜き穴(排水機能)が、基準どおりにあるかチェック。
鉄筋コンクリート造擁壁、間知石練積造擁壁だったとしても、水抜き穴がしっかりと設置されているかの確認が必要です。
擁壁の水抜き穴は、壁面の面積3㎡につき1カ所以上、内径7.5cm以上の穴が必要とされています。
水抜き穴がない、もしくは基準より少ないなどの擁壁は、雨水などの逃げ道がないので、静水圧が強くかかっている可能性があります。
古い擁壁の耐用年数はどれぐらい?
これは、僕らが土地を購入する際に、擁壁がどれぐらい大丈夫なのかを聞いたときの返答です。
「大丈夫ですよ、何十年も平気なところ多いですから」
なんて言葉を聞いても、信じないでください。
正直なところ、家を建てると、もの凄いお金がかかります。
土地の購入費、家の建築費、外構費…などなど、あっと言う間に何千万となります。
できれば、擁壁にお金は使いたくないのが本音です。
お金が多く必要になる時だからこそ、今あるもので大丈夫なら、そのままにしたいと思ってしまいます。
ただ、2メートル以上の擁壁だった場合は、行政に問い合わせをして、工作物建築確認申請書や検査済証を確認すれば、構造的な部分もわかります。
ですが、2メートル以下の擁壁は、構造等が分からない部分もあります。
それは2メートル以下だとしても、崖崩れ等が起きたときに、家を守ってくれるものだということです。
現在のコンクリートの寿命は、比較的好条件のもとで100年程度、通常60年ぐらいでみてると言われています。
でも、地震や台風の頻度、通常の雨での降水量、地盤の強度等でも変わってきます。
もしかしたら、その擁壁は60年前に作られたものかもしれません。
もしかしたら、地震などで大きなダメージがあるかもしれません。
工作物建築確認申請書や検査済証がない2m以下の擁壁は、わからないことばかりです。
業者に言われた「大丈夫」の言葉を信じず、ハウスメーカーと相談しながら行うのが1番です。
擁壁施工の費用はどれぐらい?
もちろん費用は、施工依頼する業者や住んでいる地域、そして施工する土地の地盤などによって違ってきます。
1㎡を畳で換算すると、約0.6畳になります。
わかりやすくすると、3畳で約5㎡、1㎡10万円の業者に依頼すれば、約50万円の費用になります。
これは、あくまでも単純な計算で紹介していますが、実際には500万円近い工事費になった方もいると聞きました。
擁壁のある土地は、経済面のリスクも高いことがわかります。
古い擁壁に補修もしくは補強で大丈夫なのか?
しかし、それでは補修になっていない事は素人にもわかります。
実際補修や補強は、新規で擁壁を作るよりも難しいと言われました。
金額もそうですが、より難しくなるのが工事をするためのスペースがあるかどうかと言われました。
人間の手だけでは、どうしても難しいところがでてきてしまいます。
その時に、重機などを使わないといけませんが、スペースがなければ重機を使うことができません。
そうなると補修や補強ができないこともあり、維持管理する部分でもリスクがあります。
まとめ。2m以下の擁壁のある土地は、リスクが多い。
僕たち夫婦が、擁壁のある土地を購入する際に言われたことと調べたことをお話ししました。
再度お話ししますが、擁壁のある土地は擁壁のない土地よりも、リスクがあります。
もし購入する際は、今お話しした事を含めて、リスクが必ずついてくることを知っている状態で購入をしてください。
購入時だけでなく、購入後、その場所に住んでいる限り、ずっとついてくるものだという認識が大切です。
では、また~。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
この記事が少しでも参考になったらうれしいです。
・掲載準備中。もうしばらくお待ちください。